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知っておきたい言葉

1 教育相談で知っておきたい言葉

【1】 カウンセリング・マインド

  カウンセリングで大切にしている基本的な考え方や態度で,今井五郎は「学校教育相談の実
際:今井五郎編著」の中で次の5つをあげています。①生徒を尊重する。②生徒理解を究める。
③人間関係を重視する。④生徒を主体にする。⑤気持ちを受容しても行為を認めない。
 一般的に教師は指導する立場にあるので,カウンセリング・マインドの基本的な考え方や態度
を身につけるのは苦手だと言えます。しかし,「①単なる技法を越えた人間としての在り方を問題
にしていること。②理解し,理解される教師と生徒との人間関係をつくることを大切にすること。
③児童生徒の自主性・自発性・自己決定力を尊重し,これらを伸ばすための援助としての姿勢を
大切にすること。」により,狭義の教育相談活動ではなく,教師の教育活動全体を通じて備えるべ
き資質だと言えます。


【2】 開発的・予防的教育相談

 教育相談というと,問題を持つ児童生徒やその親が対象者,と思われがちですが,学校にお
ける教育活動では,あらゆる機会を通して児童生徒に指導や相談活動を行っています。つまり,
一部の児童生徒だけを対象としているものではなく,すべてのj児童生徒を対象としているのです。
現代のように人間関係がスムーズにいかない時代においては,児童生徒への指導や相談の必
要性はますます増えてきています。では,個々や集団の児童生徒に対してどのような態度で,ど
のようにかかわっていけばいいのでしょうか。
 「開発的教育相談」とは,すべての児童生徒に対して,構成的グループエンカウンターやロール・
プレイなどの演習技法を取り入れながら,自己理解や自己洞察を深めていく過程を援助するもの
です。そして,自己実現欲求を具体化し,児童生徒の可能性を最大限発揮されるように支援する
ものだと言われています。
 「予防的教育相談」とは,児童生徒の内面理解を図り,信頼関係を確立し,一人一人の児童生
徒の精神的健康の維持と増進を図るものだと言われています。
 今井五郎は「学校教育相談の実際:今井五郎編著」の中で「開発的教育相談によって児童
生徒が目標を持ち,努力し,成就感が得られると,問題行動を未然に防ぐことができます。開発
的教育相談と予防的教育相談は,その機能を分けることが難しく,統合されたものと考えます。
筆者等は,このような援助を一括し,開発的・予防的教育相談と呼ぶことにしています。」と述べ
ています。


【3】 ピグマリオン効果とピグマリオン・マインド

 昔,ギリシャのキプロス島に,ピグマリオンという名前の彫刻師がいました。彼は自分自身が刻
んだ理想的な女性の彫刻像に恋をしてしまいました。この彫刻像を,妻にしたいと祈っているうち
に,女神がこの願いを叶えてくれました。
 このギリシャ神話の主人公から名前を取り,自分以外の人に対していろいろな期待を持つとき,
意識的,無意識的にかかわらず,その期待通りになることをピグマリオン効果といっています。
 また,教師が子どもたちに対して抱いている期待が,子どもたちの学習成績に影響することを実
験で証明したハーバード大学のローゼンタール教授によって提唱されたので,ローゼンタール効果
とも言います。
 教師が前向きな期待を抱いて接する言葉や態度,目の動きを,子どもたちは敏感に察するの
ではないでしょうか。そして,自分はできると思われていることを感じて,自分はできるんだとい
う自信や自分を尊ぶ心などが,向上心を高めていくのではないでしょうか。
 教師の「前向きな期待を抱いて接する言葉や態度」がピグマリオン・マインドと言えるのではな
いでしょうか。
 「先生と親の共同作戦-ピグマリオン教育相談-」深層心理研究会 自由現代社(1983/08)
の中に、ミュージカル「マイ・フェア・レディー」の中で,バーナード・ショーがイライザに語らせて
いる次の言葉が載っています。味わってみてください。
 「私がレディーになったと思うだけでは本物のレディーになったことを意味しません。それは自
己満足でしかないのです。私が本物のレディーになれたかどうかは,他の人たちが私を本当の
レディーとして扱ってくれたかどうかによって決まるのです。そして今,私は他の人たちから本当
のレディーとしての扱いを受けました。ヒギンズ先生も私をレディーとして扱ってくださいました。
ですから,私は今,本当のレディーになったのです。」
 

【4】 ソーシャル・スキル・トレーニング

 学校では,教科を中心とした学習の他に,友達との交流の中から集団性や社会性を身につけ
る事が大事であると言われます.特に,小学生の年代には,学校・学級集団での様々な活動の
中から,友好的な人間関係を築く能力・態度・技能を身につけることが,友人関係でのトラブルを
未然に防ぎ,健康で明るい学校生活の基礎となることでしょう。
 例えば,引っ込み思案の子供は,自分のことを主張することができず,人との積極的なやり
取りを避けてしまう傾向があります。これは,自分の意志を伝えるスキル(技能)を十分に学
習してこなかったことや,人との交流をあまり必要としない環境にあったこと,交流を避ける
ことで傷つけられることのない環境にあったことなどが考えられます。ですから,自分の考え
を主張できるような具体的な方法を学ぶ機会が与えられれば,引っ込み思案による問題も解消
できると考えられます。そう考えると,子どもたちが人間関係を学ぶことができる場として,
学校は重要な役目を担っていることになります。
 このような人間関係を具体的に学ぶ方法として,ソーシャル・スキル・トレーニングがあり
ます。この具体的な進め方は,
 「ウォーミングアップ→教示→モデリング→行動リハーサル→要約と復習」
という一連の段階を踏んで実施されます。
 

【5】 アサーション・トレーニング

 私たちは学校や職場で気持ちよくコミュニケーションをしたいと思っていますが,些細なこ
とでも思うように自分の気持ちや意見を表現できず,欲求不満から人間関係を壊すもとになっ
てしまうことがあります。お互いを大切にしながら,素直にコミュニケーションができる力を
つけていくトレーニング方法が,アサーション・トレーニングです。
 アサーションとは「相手の気持ちや権利を考えながら,自分の気持ちや権利を相手に受け入
れてもらう自己主張のコミュニケーションの方法」です。もとは心理療法の中の行動療法とし
てカウンセリングの場で用いられた言葉で,相手の立場や人権を尊重し,お互いを大切にしな
がら素直にコミュニケーションをする自己表現法で,次のような歴史があります。
 アメリカで1960年代に始まった自己表現の訓練法で,1970年代に入り,さらにより効果的,
積極的な人間関係の促進に活用されるようになりました。日本においては,1982
年に日本人に合うようなトレーニング様式を整え,日本・精神技術研究所(日精研心理臨床セ
ンター)主催で「アサーショントレーニング」として開始され,その後,変更や改良が加えら
れ,現在に至っています。


【6】 ロール・プレイ

 役割演技によって心理的な問題を理解,治療するサイコドラマ(心理劇)で,モレノ(Moreno,
Jacob L 1892~1974)が創始しました。
 日常の先生という役割,母という役割,妻という役割等,「習慣化されてはいるが,人は役割
を演じて生きている」という役割理論が基礎となっています。
 人は日常演じているそれぞれの役割について,感情や思いに気づかないで生活していること
が多く,そのために人間関係でうまくいかないことが出てきます。そこでロール・プレイによって,
他人の立場や役割を演じることにより,その立場や役割をより深く理解でき,このことにより自分
自身の行動,態度を見直すことにもなります。開発的・予防的教育相談の有効な技法のひとつで
もあります。


【7】 エンカウンター

エンカウンターとは,日本語で「出会い」と言う意味です。グループの中での体験を通して,心と
心のふれあいを深め,子ども達の人間的な成長を援助しようとするものです。 
 ふつう私たちがエンカウンターと言うときは「構成的グループエンカウンター」を指しています。
 「構成的グループエンカウンター」に対して,決められた場面や決められた演習を用意しないで
おこなう「非構成的グループエンカウンター」もあります。
 「構成的グループエンカウンター」は,具体的には「エクササイズ」と呼ばれるゲーム的な要素
を持つ演習を行い,その後の「シェアリング」と呼ばれる,体験で感じたことや学んだことを振り返
る,分かち合いという手順で実施します。
 例えば,「あなたの○○がすきです。」というエクササイズでは,学級の子どもたちが互いに相
手の良いところや好きなところについて言葉や手紙にして伝え合うことを全員がペアになってや
ります。相手の良いところを伝え合うことで,友達を肯定的に認め,自分自身も友達から肯定的に
見てもらうことで自尊心を高めることになります。
 シェアリングでは,「今まで気づかなかった自分の良いところを言ってもらってうれしかった。」
「友達の良いところを見つけるのは楽しかった。」などの温かい雰囲気の振り返りができ,互いに
良い感情を分かち合うことができるようになります。
 このようなことを学級づくりの中で実施することによって,学級の雰囲気がとても良くなり,子ど
も達の人間関係が良好なものになってきます。ですから,構成的グループ・エンカウンターのよ
うなものを「育てるカウンセリング」と呼んでいます。この方法は,限られた時間の中で,集団で
一斉に実施できるので,学級担任には大変活用しやすいものです。
 学級活動の時間や道徳の時間,総合的な学習の時間等で目的に応じて定期的・計画的に実
施すれば,さらに効果的です。
 

【8】 ピアサポート

 「ピア」というのは,「地位の等しい人,対等な人,同僚,仲間」と言うような意味を持って
います。
 子どもの抱えている問題や子どもの心は,担任の先生が一番よく知って,理解していなけれ
ばならないことは,誰もが認めることです。しかし,子どもたちの中の人間関係の問題やいじ
め,学級崩壊での問題を示す子どもの心など,子どもたちのことは,同じ仲間である子ども自
身が一番よく知っていて,一番よく気持ちが理解でき,分かり合えると言う面があることも事
実です。
 「ピア・サポート」「ピア・カウンセリング」は,この子どもが子どもに対する影響力や教育力を
仲間同士の簡単なサポートやカウンセリングの活動に応用したものと考えることができます。
この手法を子どもたちが身につけ,仲間である学級の子どもたちへの援助に役立てていくもの
です。
 具体的には,子どもたちに「相手の感情を聴き取る」「話の内容を正しく受け止め,明確にす
る」「質問する」「問題解決と意志決定能力をつける」などの力を高めるためのトレーニングを実
施します。これによって,相手のことを理解し,感情や考えを尊重できるようになり,温かみがあ
って親しみやすい人間関係をつくっていこうとするものです。
 構成的グループエンカウンターやソーシャル・スキル・トレーニングのエクササイズを通して,こ
れらを体験的に学ばせることができます。



【9】 ブリーフセラピー

 ブリーフセラピーは「短期療法」と訳されています。つまり短期(数回)で相談者の目的が達成
される方法だといえます。平均7回の面接で7割の割合で,改善もしくは治療達成がなされたと
報告されています。
 ブリーフセラピーはミルトン・H・エリクソン(精神科医:催眠療法家)を出発点としていますが,い
くつかのアプローチの方法があります。
 その中のひとつに,解決志向型のアプローチがあります。この方法は問題やその原因にはほ
とんど目を向けません。「よりよき未来の実現」を目指していきます。従来のように原因を探り,そ
れを取り除いて解決していくのではなく,解決された時どうなっているのかを目指していきます。
そのために人が持っているリソース(内的,外的に人が持っている資源や資質)を発見し,有効
に活用していきます。リソースの中から相談者ができうる「小さな変化」を積み重ねて,雪だるま
式に大きくして解決していきます。特に次の3つを基本にしています。①うまくいってるものは変え
ない。②一度やってうまくいったら,またそれをする。③うまくいかなければ,違うことをする。
 ブリーフセラピーは,現場の先生方が活用していくことのできる有効な方法のひとつです。



【10】 ストレスマネジメント教育

ストレスマネジマント教育とは,ストレスに対する自己コントロールを効果的に行えるように
なることを目的とした教育的な働きかけのことです。その内容は,「ストレスの概念を知る」,
「自分のストレス反応に気づく」,「ストレスの対処法を習得する」,「ストレスの対処法を活
用する」という4つの段階から構成されます。「ストレスの概念を知る」段階で,心身のストレ
ス反応に気づくようになるための学習を行いながら,「自分のストレッサーやストレス反応に
気づく」ことから始めます。そして「ストレス対処の方法を習得する」段階で,社会的なスキル
やリラクゼーションなどの技法を学び,日常生活の中でストレスに対して主体的に対処するこ
とができるようになることを目指します。そして,そうした体験を通して,「ストレスの対処法を
活用する」段階へと生き方が変わっていく一連の過程のことをいいます。山中・冨永(2000)は
「ストレスマネジメントの技法は,すべての『動作』と『イメージ』を基礎にした『構え』と『体験』
を扱っている。」と指摘しています。ストレスの対処法を活用した生き方に変わっていくために,
「動作」と「イメージ」の役割がとても大切だということです。



【11】 アドラー心理学(個人心理学)


 アドラー心理学(個人心理学:Individual Psychology)は、オーストリアの精神科医であるアルフレッド・アドラー(1870~1937)が,創始,発展させた心理学です。
 アドラー心理学では
○人間(個人)を分割できない全体としてとらえ、意識や無意識は,葛藤を起こしているというより  
むしろ,アクセルやブレーキとして働いていて、全体として統一されていると考えます。(全体論)
○人間は目的的な存在であって、人間の行動の目的を探ることによってその人間を理解できると考えます。(目的論)
○人間は純粋に客観的な事実を知ることは不可能であり、自己のユニークな認知システムを通した主観的認知しか知り得ない。だから、その人間の主観的認知がどのようなものであるかを知ることが重要だと考えます。また,人間の認知の仕方の傾向を視覚,聴覚,触覚で分け,人によってどの感覚が優位であるかが異なる点を指摘したのもアドラーです。(現象学・認知論)
○人間は社会的な存在であって、個人と周囲の人間の関係にこそ「心の問題」は存在すると考えます。(対人関係論)
○人間には「共同体感覚」という、周囲の人や社会と協力していこうという感覚があり、それを発達させて周囲と協力して、貢献感を感じていくことで人間はより幸福に生きていくことができる,と考えます。(共同体感覚)
※世紀末のウィーンに教育相談所をいくつもつくるなど,「教育相談の父」とも呼べる業績を残しました。



e-Learningに使用した参考文献並びに引用文献
○「エンカウンターとは何か:教師が学校で生かすために」
  図書文化社  國分康孝ほか共著
○「解決志向ブリーフセラピー:森・黒沢のワークショップで学ぶ」
  ほんの森出版 森敏夫・黒沢幸子
○「学校教育相談・初級講座:生徒指導の基本と実際シリーズ5」
  小泉英二編著
○「学校教育相談の実際」
  学事出版 今井五郎
○「教育相談:相談員と相談者のための相談シリーズ2」
  大成出版社 和泉忠俊・金子靖共著
○「講座 生徒指導:3 個別指導と教育相談」
  明治図書 鈴木清・沢田慶輔・宇留田敬一編集
○「小学校の教職員のための 教職員ハンドブックQ&A」
  山梨県総合教育センター主事 依田勝芳
○「教育相談ハンドブックQ&A:中学校編」
  山梨県総合教育センター長期研修員 小林淳二 
○「先生と親の共同作戦-ピグマリオン教育相談-」深層心理研究会 自由現代社(1983/08)
○「動作とイメージによるストレスマネジメント教育(基礎編)」北大路書房 山中寛・冨永良喜


 
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